Narrative ESSAY 01
Library Girl | Lys -fantasia for your dress-
2016年10月、select shop Calliの1周年を記念して開催した企画展“Library Girl”
この企画展は、Lys -fantasia for your dress-を主宰する平井裕梨さんがCalliの1stアニバーサリーにお贈りくださったものでした。
Calliのオープンに携わってくださった方々から、とっておきの物語を集めて、7日間の架空の図書館がオープン。
そんな図書館に集められた素敵な物語を改めてご紹介します。
企画展“Library Girl”は、2016年10月8日から10月14日にselect shop Calliで開催されました。Calliのお店を立ち上げる際にご協力いただいた、建築家やデザイナーなど、とても多彩で素敵な方々にCalliの1stアニバーサリーに寄せて選んでいただいた書籍をメッセージを添えて展示した企画展。ご参加いただいたのは、下記の方々でした。
さくらいはじめ/POP ART SOUL(イラストレーター)
中村陽子/REINETTE(ファッションデザイナー)
吉永健一/吉永建築デザインスタジオ一級建築士事務所(建築家)
三枝俊輔/VIENNA WINNER(グラフィックデデザイナー)
Sanae(獣医師)
lost girls books(デザイナー)
SAIKA/select shop Calli(ディレクター)
yuri/LYS・LILY GLASS GROUP(ディレクター)
選書と添えられたメッセージをご紹介していきます。
さくらいはじめ/POP ART SOUL(イラストレーター)
イラストレーター さくらいはじめさんの選書
Sam Haskins -COWBOY KATE & OTHER STORIES
The Sam Haskins Estate 土曜社
1964年に発行された写真家サム・ハスキンスの最高傑作の呼び声も高い“本のレアグルーヴ・クラシック”。Calliスタイルにも通じる遊び心ある大人の女性像で綴られた艶と瑞々しさが溢れ出すモノクロの世界。
Andy Warhol -Fashion forewored by Shimon Doonan (Thames & Hudson)
『VOGUE』や『Harper’s BAZAAR』誌等で商業デザイナー/イラストレーターとして活躍していた頃のアンディ・ウォーホルのモード画集。
ポップアート前夜のポップでエレガントなドローイングをCalliのスタイルの側にも。
Gruau -MEMOIRE DE LA MODE-(光琳社出版)
1950年代のDiorのブランドイメージをより豊かなものにし、多くのファッション誌を舞台に活躍してきたモード画家、ルネ・グリュオー。
Caliiのスタイルにも寄り添える古き良き時代の遺産は優雅で力強く、そして時を超えて美しい。
さくらいはじめ/POP ART SOUL
イラストレーター/グラフィックデザイナーとして、広告・雑誌・レコードジャケットなどで活躍。音楽、ファッション、映画など60年代文化への造詣が深く、“POP ART SOUL”と掲げた主題のもとスクエアな探究とヒップなパフォーマンスで古くて新しい創作に取り組む。
Calliのイメージガールのドローイングも手掛けた。
中村陽子/REINETTE(ファッションデザイナー)
ファッションデザイナー 中村陽子さんの選書
エルザ・スキャパレリ
今回ご紹介させて頂く本はシャネルと同時期に活躍したデザイナー、エルザ・スキャパレリの作品についての本「エルザ・スキャパレリ」。
ディオールやシャネルなど、それぞれのデザイナーごとにシリーズで11冊出ているうちの1冊です。パリのオートクチュール関係の本で、ビジュアル重視の洋書はたくさんありますが、こちらは和訳版。ビジュアルだけでももちろん素敵なのですが、掲載されている当時のお洋服のアレコレを知ることができるのはもっと素敵です。
中村陽子/REINETTE
レディな雰囲気を纏うヴィンテージを添えた、シックでクラシックなラインナップ。
洋服ブランド「Reinette(レネット)」とアクセサリーブランド「Saphiret(サフィレット)」そしてヴィンテージセレクト&リメイクライン「Jonquille(ジョンキーユ)」の3つをメインに展開するショップ大阪南堀江・REINETTEのデザイン・企画を担当。
吉永健一/吉永建築デザインスタジオ一級建築士事務所(建築家)
建築家 吉永健一さんの選書
いいビル写真集 WEST
なんてことない普段のまちがきらりと輝いて見えてくる三冊その1。
1950〜70年代のビルをこよなく愛するチーム『BMC(ビルマニアチーム)』監修による“いいビル”の写真集です。BMC推薦のいいビルの紹介のほか、ビル初心者向けの監修ポイントを解説しています。なにげなく通り過ぎていたあのビルこのビルも実はすごいビルなのかもしれない。町中のビルがきらりと輝いて見える一冊です。
ピクトさんの本
なんてことない普段のまちがきらりと輝いて見えてくる三冊その2。
注意喚起を促す人型のピクトグラムサイン=ピクトさんの解説本です。
「ピクトさんが体を張ってまちに潜む危険を知らせてくれている」と思って見返せば何気なく見ている注意看板も愛おしく感じられるもの。時に悲しく時に滑稽なピクトさんの活躍に「ご苦労様。ありがとう」と声をかけたくなる一冊です。
タイポさんぽ-路上の文字観察
なんてことない普段のまちがきらりと輝いて見えてくる三冊その3。
まちで見かけるユニークな看板文字を集めた写真集です。DTPが生まれる以前の手書きでデザインされた看板文字たち。気ままにペンを滑らせて描かれたタイポには既製のフォントにないかわいらしさがあります。今となっては数少なくなってしまったそんなタイポたちを探しにいきたくなる一冊です。
吉永健一/吉永建築デザインスタジオ一級建築士事務所
Calliのインテリアデザインを手がける。
設計のほか建築とまちの知られざる魅力を世に知らしめる活動を行う。
モットーは「この世におもしろくないものなどないおもしろくない見方があるだけだ」
三枝俊輔/VIENNA WINNER(グラフィックデザイナー)
グラフィックデザイナー 三枝俊輔さんの選書
少女椿
丸尾末広
戦後まもない日本で、貧しい家に生まれた少女が見世物小屋に行き着く話の漫画。
アート作品のような独特で綺麗なイラストと規制のない衝撃的な内容は、偏見や差別を越えた不思議な感情になる一冊です。
田宮模型の仕事 木製モデルからミニ四駆まで
田宮俊作
子どもの頃に夢中になって作ったプラモデルやミニ四駆を製作している会社、TAMIYA。
モノだけではなくストーリーにも焦点をあて、日記のように正直にTAMIYAの歩みが描かれています。長く愛され続けるものづくりのヒントになる一冊です。
今夜、すべてのバーで
中島らも
中島らもがアルコール依存症で実際に入院していた頃の話を元にした本。
書いている時もアルコールに溺れていたということで、ところどころで意味不明ですが、それが中島らもらしくて、その意味を理解したくて何度も読み返してしまう一冊です。
三枝俊輔/VIENNA WINNER
1985年大阪生まれ。デザイン事務所・プランニング会社を経て、福祉を学ぶために大学へ入学。在学中に児童養護施設でのボランティア、studio-Lに参画したことをきっかけに、多様性のあるデザイン事務所を作りたいと思い卒業後に独立。影響を受けた大阪の西成区に事務所を置く。
Calliのロゴデザインを手がける。
Sanae(獣医師)
Calliのイメージガールとしてモデルを担当するSanaeさんの選書
ロマンティックに生きようと決めた理由
永井宏
この本との出会いは、不自由はないけれど何か足りない!と焦燥感に駆られていた頃でした。本のタイトルだけみて、『自分探し』の参考になると思い手に取りました笑。
しかし、予想は裏切られ、書かれていたのは日常の暮らしでした。
ただ、著者は日常の中にある人々の独特な物事の見方、感じ方を見出していました。その人々の視線は、アートとも呼べる感性そのものでした。
まさに、Calliのテーマである『日常に彩りを添える』ことと、この感性が重なり合ったのでした。
VOGUE ON ココ シャネル
誰もが知るファッション界の天才、ココシャネルのVOGUE描き下ろしのイラストや写真、そして、ファッションライターによる当時の記述を組み合わせた一冊です。
Calliのブランドイメージとは少し違うかなと思いましたが、ファッションに対する思いや信念には共感することが多々あるのではと思います。
Calliの店主であるお母様も、1年前、第二の人生としてこのお店を立ち上げることとなり、心配や不安も大きかったことと思います。しかしながら、今では昔からここにCalliがあって、お母様がいて、それを取り囲む人々がいたかのように感じます。そんなお母様にココシャネルを感じたのかもしれません。
見上げる
Thousands Birdies’ Legs
もともと、寺尾紗穂さん(このバンドのボーカリストでソロ活動もされています)が大好きで、今回、Calliのお店にふさわしい音楽を思い浮かべて、まず思いついたアーティストでした。
とにかく声がキレイ。
ただキレイなだけでなく、心に染み入る声なのです。
頭の中にCalliのお店をイメージしたとき、一番しっくりきた曲が『見上げる』でした。透明感のある明るさの中にも哀愁を感じる曲で、鶴橋というちょっとカオスな場所に馴染むでもなく、浮いているわけでもない、微妙なバランスで在るCalliの魅力と重なる部分があるように感じます。
Sanae
奈良生まれ。
大阪府立大学獣医学科卒業後、大阪市内の動物病院で獣医師として勤務したのち、現在は東京にある猫専門の動物病院に勤務。
3匹の猫と暮らしており、猫の気持ちを大切にした医療を目指して、日々活動中。
Calliのイメージガールとしてモデルを担当。
lost girls books(デザイナー)
本にまつわる活動を展開するLost girls booksさんの選書
イノセント・ガールズ〜20人の最低で最高の人生〜
山崎まどか アスペクト
敬愛している山崎まどかさんの、もう何回も読んでいる大好きな一冊。
あまりにも数奇な人生を生きた20にんのアメリカ人女性たち。
自分らしさを追い求め、守り続けた女性たち。
頑固だったが故に悲劇的な人生を送った女性も多く登場する。
人生の成功者の物語ではないので、本国アメリカでもあまり知られていない女性も多いそう。
女性の普遍的なテーマに行き当たる本作を読んで、今一度、自分自身について考えてみるのもいいかもしれない。
恋愛小説集
岸本佐和子翻訳 講談社文庫
お茶をお供に、秋の夜長にロマンティックな恋愛小説を読んでみたりするのもこの季節のお楽しみの一つ。こちらの短編集は、本に恋してしまった女性やバービー人形と真剣に交際する男性など、一筋縄でいかない奇妙な恋愛でいっぱいの短編集。あまりに想像を超えた設定に笑いが止まらない。奇妙といえども、恋する気持ちは真剣なもの。この一冊をきっかけに、様々な愛の形について考えてみては。
レズビアン短編小説集 ヴァージニア・ウルフほか
利根川真紀翻訳 平凡社ライブラリー
同性同士の恋愛が浸透しつつあるこの頃。こちらの短編集は女性同士の恋愛は秘めておかなくてはいけなかった19世期末からの女性同士の恋愛短編をまとめた一冊。表に出すことが出来ないということで、その恋愛の喜び・苦しみ・切なさ、あらゆる感情とその本質は異性同士のものよりも敏感で繊細なものであったであろう。人生設計やキャリアなどが複雑に絡み合い、恋愛に躊躇してしまう現代だからこそ読みたい一冊。
三十歳
インゲボルク・バッハマン 岩波文庫
あまりにも直感と勢いに任せてきてしまった人生だから、年齢を重ねることについて自分と向かい合った事がなかったように思う。この短編集の表題作「三十歳」は、もうすぐ三十歳を迎えようとする男性の物語。冒頭部分、主人公が三十番目の年を迎えるに際しての、若さ・老い・幕が上がってしまう瞬間・無駄にしてきた可能性についての部分が一気に私の中に流れ込んできた。
歳を重ねるということ、過去の自分とこれからの自分。
三十歳に限らず、何かの転機や節目の年に、思い切り自分と向き合ってみては。
CARSON ZINE The First Three Issues
DIRTY
翻訳家でもあるDIRTYさんこと、西山敦子さんのパーソナルZINEである「CARSON ZINE」の一冊目と三冊目を合わせた一冊。
一貫して女性とフェミニズムについてZINEを作り続け、活躍されているDIRTYさんの魅力がぎゅっと濃縮された一冊。
パーソナルな内容ながら、全ての女性が共感できることが何気ない一行、一ページに散りばめられている。私の宝物の一冊。
Lost girls books
Hello, we are lost girls books
「女子たちよ、本を読もう」を合言葉に2016年より活動スタート。
本にまつわるあれこれに、読書会を企画。
並行して、”NINE STORIES”として、色彩、記憶、物語をテーマとしたものづくりの活動を百貨店催事や個展を中心に大阪にて展開。
活動名の由来は、たくさんの物語を作っていきたいという思いを込めて。
自主企画として映画上映やトークイベントの企画に携わるほか、映画館、配給とのコラボレーション企画も行っている。
SAIKA/select shop Calli(ディレクター)
select shop CalliのディレクターSAIKAの選書
赤毛のアンの手作り絵本
子どもの頃、母からプレゼントしてもらった思い出の本です。
赤毛のアンの物語とともに、お料理やお菓子、洋裁や刺繍、編み物など、アンの世界を手作りで再現することができる魔法の絵本です。
忙しい生活で、日々の暮らしを整えることがなかなかできていないこの頃ですが、理想の暮らしを思い浮かべるとき、この本で描かれた世界をいつもイメージしているような気がします。
大好きなお洋服でも、ほんの小さなボタンでも。
とっておきのお気に入りをみつけて、日常に彩りを添える。
そんなCalliのコンセプトはここから生まれたのかもしれません。
SAIKA/select shop Calli
大阪生まれ。建設コンサルタントを経て、2013年よりコミュニティデザイン事務所studio-Lに参画。大阪を拠点に各地で地域づくりのお手伝いをする傍ら、2015年10月、地元鶴橋で母と共に、「お気に入りをみつけて、日常をほんの少しエレガントに」をコンセプトに、ファッションやカルチャーを通して女性の日常に彩りを添えられるようなお店select shop Calliを立ち上げ、お店の企画、ディレクションを手掛けている。
Yuri/LYS LILY GLASS GLOUP(ディレクター)
LYSディレクターYuriさんの選書
ティファニーのテーブルマナー
W.ホービング(著)J.ユーラ(イラスト) 後藤鎰夫
はじめてお会いした瞬間「“小粋な”女性!」と感じずにはいられなかったCalliの店主。
Yoji Yamamotoのデザイン性のある衣服に身を包み、ガーリッシュさがほんのり添えられた遊び心あるアクセサリー。そのセンスがなんとも潔く、それでいて華やか。
そのファッションとリンクするかのように、エスプリに富んだ心意気。
こんな素敵な女性になりたいと感じたとき
想わせていただいたのがこちらの一冊
1969年代の終わりという女性が台頭し始めた新しい時代に発刊されたティファニーのマナーブック。ウィットに溢れる語りと暖かな気配り。線画のようなイラストや装丁のセンス。内面と外面の表裏一体を想わせるものがこの一冊にあります。
Calli店主・永子さんのような、豊かな女性に、一歩近づけるかも。
Yuri/LYS LILY GLASS GLOUP
“fantasia for your dress”をコンセプトに展開するLYSの主。
日常の装いにファンタジアを添えてくれるファッションアイテムを展開。
エスプリを添えた、自由奔放な遊び心を紡ぎたい。
架空の図書館“LYS Library”に在籍中。
“Library Girl”を企画したLys -fantasia for your dress-を主宰する平井裕梨さん。「fantasia for your dress(あなたのドレスにファンタジアを)」をコンセプトに、オリジナルの洋服とアクセサリーを展開されています。
“Library Girl”を企画したLys -fantasia for your dress-を主宰する平井裕梨さん(提供:LYS)
“Library Girl”は、「その場所だけのための架空の図書館」をテーマに東京のViolet And Claireで開催した後、巡回展としてCalliで開催されました。その場所だけのちょっとこだわったコアな視点で巡回している図書館。東京展では、Violet And Claireのテーマであるガールズスピリットを掻き立てられるような選書で、Calliでの展示は、また、雰囲気が異なったものとなりました。
お気に入りを纏うことで日常にほんの少し彩りを添える、そんなCalliのテーマからインスピレーションし、クリエイターそれぞれがセレクトした選書から、Calliのイメージがますます広がったような気がしています。
“Library Girl”のような、裕梨さんの空想をカタチにする、LYSの今後のクリエーションも楽しみです。